日英伊3カ国が共同開発する次世代戦闘機「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」。2026年4月に初の国際統合契約が締結されるなど着実に前進する一方、英国の資金不足・コスト膨張・参加国拡大をめぐる思惑の対立など、複数の課題が浮き彫りになっている。
GCAPとは何か
GCAP(Global Combat Air Programme:グローバル戦闘航空プログラム)は、日本・イギリス・イタリアが共同で開発を進める第6世代戦闘機(※現行のF-35などは第5世代)のプログラムだ。
- 目的: 航空自衛隊のF-2、英伊空軍のユーロファイター タイフーンの後継機として開発
- 配備目標: 2035年
- 発表: 2022年12月19日
- 開発を管理する国際機関: GIGO(GCAP International Government Organisation)── 2025年7月7日、英国南部のレディングに正式設立
機体の設計・開発を担う合弁企業(JV)として「Edgewing(エッジウィング)」が設立されており、日英伊それぞれの主要防衛企業が参画している。
| 国 | 企業 |
|---|---|
| 日本 | JAIEC(日本航空機産業振興株式会社)/三菱重工 |
| 英国 | BAE Systems |
| イタリア | Leonardo |
最新動向(2026年4月)
初の国際統合契約を締結
2026年4月1日、GIGOはEdgewingに対し、6億8600万ポンド(約1350億円) の開発契約を締結したと報じられている。
- これまで3カ国がそれぞれ個別に契約を結んでいたが、今回が初の国際統合契約となる
- 契約期間は2026年6月末までの約3カ月間
- 設計・エンジニアリング作業の継続が主な目的とされている
- GCAP Agency最高責任者の岡正己氏は「各国が個別に行ってきた活動が、本格的な国際プログラムの一部として実施されることになる重要な節目だ」と述べたと報じられている
なぜ3カ月の「つなぎ契約」なのか
当初、Edgewingへの初期契約は2025年末に締結される予定だったと報じられている。遅れた主な原因は、英国の「防衛投資計画(Defence Investment Plan)」の未公表にあるとされる。
- 同計画は英国の今後10年間の防衛予算を定めるもの
- 公表期限をすでに8カ月以上過ぎているにもかかわらず、2026年4月時点でいまだ未公表との指摘がある
- 英国防衛予算には約280億ポンドの資金不足があるとも報じられており、日本側は「2035年配備という重要な目標が危うくなる」と懸念を示したと伝えられている
背景・経緯
プログラム発足まで
- 2017年ごろから、英国の「テンペスト」計画と日本の「F-X次期戦闘機」計画を統合する議論が始まったと報じられている
- 2022年12月、日英伊3カ国が正式に統合を発表し、「GCAP」として一本化
- 2023年12月、政府間機関(GIGO)設立条約に署名
- 2024年6月、日本の国会両院が条約を承認
- 2025年7月、GIGOが英国・レディングに正式設立
機体の特徴(想定)
GCAPで開発される次世代機は「システム・オブ・システムズ(複数のシステムを連携させる仕組み)」として設計されると報じられている。主な特徴として以下が挙げられている。
- 高度なステルス性能(全領域での低観測性)
- 有人機と無人機の連携運用(ドローン・チーミング)
- AI・先進センサーの搭載
- 超長距離の航続距離
- 機体サイズはユーロファイター タイフーンの約1.3倍程度と推定されている
日本の担当分野
防衛装備庁によると、日本は以下を担当する予定だという。
- 機体の構造システム・通信システムなど
- エンジンの圧縮機・タービンなど高度な技術が必要な部分(デモエンジン「XF9」の実績を活用)
- 連携無人機の研究開発(2026年度予算に48億円を計上)
2026年度防衛予算では、次期戦闘機(GCAP)の開発費として1602億円が計上されたと報じられている。
コスト問題
GCAPの開発コストは当初の見積もりから大幅に膨らんでいるとの指摘がある。
- イタリアの負担額: 2021年時点の見積もりは60億ユーロ(約1兆円)→ 2026年初頭の新試算では186億ユーロ(約3兆4000億円) へ増大したと報じられている
- イタリアの野党・五つ星運動は「軍史上最高額のプログラムだ」と批判している
- 3カ国合計の総負担額は概算で約10兆円規模に達するとの指摘もある
参加国拡大をめぐる動き
カナダのオブザーバー参加
2026年3月31日、朝日新聞は「3カ国がカナダをオブザーバー国として枠組みに加える方向で調整している」と報じた。
- 「オブザーバー国」とは、正式な開発参加国ではなく、機密情報の共有を受ける立場を指す
- 2026年3月6日、小泉進次郎防衛相とカナダのマクギンティ国防相との会談でも議題に上がったと報じられている
- カナダ側の背景として、トランプ政権との関係悪化を受けた米国依存からの脱却の一環として関心を示しているとの分析がある
- 日本政府内では「新たな参加国が増えれば開発が停滞し、2035年の配備目標が危うくなる」との懸念があると報じられている
ドイツの接近
2026年2月、独有力紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングは「ドイツがGCAPへの参加を検討している」と報じた。
- ドイツは仏独西3カ国による戦闘機開発計画「FCAS/SCAF」の行き詰まりから、GCAPへの乗り換えを模索しているとされる
- しかし、米国の防衛メディア「Breaking Defense」などは「対等なパートナーとして今から参加するには遅すぎる」と指摘していると報じられている
- イタリアのクロセット国防相は「参加を望む国が道筋を把握できる条件を整えている」と述べ、歓迎する姿勢を匂わせたと報じられている
インド・サウジアラビアへの打診
- インドから日本政府へGCAP参加の可能性を探る打診があったと産経新聞が報じている。日本政府は技術流出リスクを理由に受け入れに慎重な姿勢を示しているという
- サウジアラビアもGCAP参加を要請したと報じられており、英伊は前向きとされる一方、日本は慎重とも伝えられている
論点・争点
① 英国の資金・コミットメント問題
- 英国の「防衛投資計画」未公表による契約遅延が相次いで発生していると指摘されている
- 日本・イタリア両国政府が英国の決意に疑念を示しているとも報じられている
- 2026年6月以降に大型の追加契約を結べるかどうかが、プログラムの今後を左右するとみられている
② 開発コストの膨張
- イタリア国内で「コスト高騰が許容範囲を超えている」との批判が出ているという指摘がある
- 参加国が増えれば費用分担の軽減が期待できる反面、意思決定の複雑化や開発遅延のリスクが増すとの見方もある
③ 参加国拡大 vs. 開発速度
- 英国・イタリアは費用分担の観点から参加国拡大に比較的前向きとされる
- 日本は「参加国が増えると2035年配備という目標が危うくなる」として新規参加国の受け入れに慎重との報道がある
- カナダ・ドイツ・インド・サウジアラビアなど複数国が関心を示しており、今後の枠組み交渉が焦点になるとみられている
④ 技術流出リスク
- 新規参加国の受け入れに際し、先端技術の流出を懸念する声が日本政府内に根強いと報じられている
- 特にインドについては「技術を抜き取られるだけではないか」(防衛省幹部)との警戒感があると産経新聞が報じている
⑤ 「日本主導」か「英国主導」か
- GIGO(政府間機関)とEdgewing(JV)はともに英国に本部を置いており、日本が掲げる「日本主導の開発」が後退するとの指摘が一部で出ていると報じられている
- GIGO初代トップには日本人(岡正己氏)が就任しており、形式上は3カ国でバランスをとっているとされる
まとめ
GCAPは2026年4月に初の国際統合契約を締結し、プログラムとして新たな段階に入ったと報じられている。一方で、英国の資金計画の不透明さ、コストの膨張、参加国拡大をめぐる3カ国の温度差など、複数の課題が山積している状況だ。2035年配備という目標を達成できるかどうかは、今後数年間の各国の決断にかかっているとみられている。
参考情報(検索キーワード)
- 「GCAP Edgewing 686 million contract April 2026」
- 「GCAP グローバル戦闘航空プログラム Wikipedia」
- 「GCAP カナダ オブザーバー 朝日新聞 2026」
- 「GCAP イタリア コスト 186億ユーロ」
- 「GCAP ドイツ FCAS 参加検討 2026」
- 「GCAP 日本 担当分野 防衛装備庁 Yahoo ニュース」
- 「GCAP Defense Investment Plan UK delay Breaking Defense」


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