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新紙幣が自販機・券売機で使えない問題、発行から1年以上経っても続く理由とは

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新紙幣なのに使えない…自販機・券売機トラブル問題、発行から2年近く経っても続く理由

2024年7月に約20年ぶりに発行された新紙幣(渋沢栄一・津田梅子・北里柴三郎)。しかし発行から1年以上が過ぎた2025年以降も、自動販売機や飲食店の券売機で新紙幣が使えないというトラブルが各地で報告されており、ネット上でも断続的に批判の声があがっている。なぜ対応が遅れているのか、背景を整理する。


そもそも何が起きているのか

2024年7月3日、日本では20年ぶりとなる紙幣の改刷が行われた。1万円札・5000円札・1000円札のデザインと偽造防止技術が刷新されたが、これに伴い自動販売機や券売機など現金を扱う機器の多くが新紙幣を認識できない状態となった。

  • 発行当初(2024年7月時点):飲料の自動販売機のうち新紙幣対応は約2〜3割にとどまっていたと報じられている(日本自動販売システム機械工業会調べ)
  • 発行から1年(2025年7月時点):飲料自販機の対応は5〜6割程度まで上昇したが、未対応機が依然として相当数残っているという(共同通信など)
  • 同時期、ATMや交通機関の券売機はほぼ対応完了と報じられており、業種間の格差が鮮明となっている

対応が遅れているのはどんな場所か

業種によって対応状況に大きな差があるとされている。

  • 対応が早かった業種:銀行ATM・大手スーパーのセルフレジ・コンビニレジ・鉄道の券売機など
  • 対応が遅れている業種:飲料の自動販売機・飲食店(ラーメン店・そば店など)の券売機・コインパーキングの精算機・たばこの自動販売機など

たばこの自動販売機については、購入者がコンビニへ移行していることや、成人識別システム「タスポ」の運用終了(2026年3月末)が重なり、費用をかけて更新する事業者が少ないという指摘がある。

なぜ対応が進まないのか:主な理由

1. 更新費用が高額

券売機や自動販売機を新紙幣対応にするには、主に以下の方法が必要とされている。

  • 機器の買い替え:新品の券売機への交換費用は約70万〜200万円程度(メーカー・機種により異なる)
  • 部品交換(ビルバリデータ交換):紙幣を識別する内部部品のみを交換する方法で、約15万〜50万円程度かかるとされる
  • ソフトウェアアップデート:一部の比較的新しい機種で対応可能。費用は約50万〜120万円と報じられている

原材料費・人件費の高騰が続く中で、特に中小の飲食店や個人事業主にとって数十万〜数百万円の出費は大きな負担となっているという指摘がある。

2. 機器の調達が追いつかない

新紙幣発行直後には、券売機メーカーへの注文が殺到し、納品時期が未定となるケースが相次いだと報じられている。業者側も「終わりが見えない」状態だったという(2024年7月・TOKYO MX報道より)。

3. センサーの汚れによる誤作動

一度対応済みとなった機器でも、新紙幣に搭載された高精度な偽造防止技術(3Dホログラム・すかし・磁気パターンなど)を識別するセンサーが汚れると、新紙幣を「未認識の紙幣」と判断して返却するケースがあるという。定期的なメンテナンスが必要とされている。

4. 「キャッシュレス移行」を選んだ事業者の増加

新紙幣への対応を行わず、代わりにキャッシュレス決済専用に切り替えた事業者も一定数いるとされている。

  • JR東海バスは運賃箱を廃止し、現金支払いを手渡し対応とした(日本経済新聞報道)
  • 飲食チェーンの「グローバルダイニング」は新紙幣発行前に完全キャッシュレス化へ移行
  • 路線バスのキャッシュレス専用化の実証実験も国土交通省の方針のもと進められているという

利用者の声と社会的な反応

「駐車場で新紙幣が使えず、お札が戻ってきた」「学校の自販機が未対応で買えない」「暑い日に自販機で飲み物を買えなかった」といった声が各地で報告されており、地方ニュースやSNS上でも不満の声が定期的に浮上している。

「しゅふJOB総研」が実施した調査(有効回答408名)では、新紙幣発行後にお札を使う機会が「減ると思う」と回答した人が43.9%に上ったとされている。また別の調査(有効回答1,000名)では、51.8%が「キャッシュレスで決済することが多い」と回答しており、現金離れが進んでいることも浮き彫りになっている。

一方で「キャッシュレスが増えているのに自販機や券売機を変えなければならないのは無駄」という意見も調査の回答に含まれていたと報じられている。

流通全体の状況

日本銀行によると、2025年5月末時点で国内に流通する紙幣約160億枚のうち、新紙幣への切り替えは約3割にとどまっているという(共同通信)。これは前回2004年の紙幣刷新時の半分のペースとされており、キャッシュレス化の進展や「たんす預金」の増加が影響していると指摘されている。

補助金制度の活用状況

新紙幣対応を機に機器を更新する場合、「IT導入補助金(インボイス枠)」や「中小企業省力化投資補助金」などを活用できるケースがあるとされている。ただし、ハードウェアのみの導入は補助対象外となる場合があり、ソフトウェアとの併用が要件となるケースが多いという。


論点の整理

この問題をめぐっては、複数の異なる立場からの指摘がある。

  • 消費者側:新紙幣が普及しているのに使えない場所があることへの不満。特に現金しか使えない環境の高齢者や子どもへの影響を指摘する声がある。
  • 事業者側:更新費用・調達難・人手不足という三重の障壁。「費用対効果が見合わない」として対応を見送るケースも一定数あるとされている。
  • キャッシュレス推進派:今回の事態は「現金に依存するインフラの脆弱性」を示しているとして、キャッシュレス移行を加速する機会と捉える見方もある。
  • 現金維持派:高齢者・外国人観光客・デジタル弱者など現金を必要とする層への配慮を求める声もある。

参考ソース

  • 共同通信(2025年7月)
  • 東京新聞(2024年8月)
  • TOKYO MX(2024年7月)
  • Business Insider Japan(2024年7月)
  • TOS大分放送(2025年7月)
  • 時事通信(2024年7月)
  • 日本自動販売システム機械工業会(各種調査)
  • 経済産業省(キャッシュレス決済比率データ)

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