【ニュース解説】イラン情勢緊迫で原油急騰、日本の家計に「3段階の波」 実質賃金はどうなる?
2026年3月14日
2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの大規模軍事攻撃を実施しました。これを受けて世界の原油価格は急騰し、石油の輸送路であるホルムズ海峡の封鎖懸念とあいまって、日本の家計・物価への影響が広がりつつあります。
ニュースの概要
2月28日、米国とイスラエルがイランを攻撃。イスラエルは数十の軍事目標を狙った攻撃を行ったとし、米国とイスラエルによるイランへの大規模攻撃でイランの最高指導者ハメネイ師が死亡しました。報復として、イランがイスラエルや米軍が駐留する周辺国を攻撃するなど、中東情勢が緊迫化しています。多くの船舶が、原油・LNG等の輸送の要衝であるホルムズ海峡の航行を避けており、同海峡は「事実上の封鎖」状態と報じられています。
原油価格は、攻撃前の2月28日時点ではWTI原油価格は1バレル67ドル台でしたが 、その後急騰。WTIは一時119ドル台まで上昇しましたが、トランプ米大統領がイランへの軍事作戦の攻撃終結に言及したことで、3月10日には84ドル台まで下落しました。 ただしその後も市場は不安定な状況が続いており、3月13日時点ではWTIは1バレル約95ドルで推移しています。
本ニュースの要点
- 3月9日時点でガソリンの全国平均価格は161.8円と4週連続で値上がりしており、3月12日にはすでに一部スタンドで196円に達するなど急騰が始まっています。石油元売り各社の卸売価格引き上げにより、次回調査では180円を突破する可能性も指摘されています。
- 政府は、原油価格高騰による石油製品価格の高騰を抑制するため、ガソリン・軽油・重油・灯油・航空機燃料を対象とした緊急的激変緩和措置を2026年3月19日から開始しています。 ただし財源として活用する基金の残高は約2,800億円(2月末時点)であり、事態が長期化した場合の財政悪化リスクも指摘されています。
- 第一生命経済研究所の試算では、戦況悪化を想定した原油130ドルシナリオの場合、実質GDPを1年目▲0.58%、2年目▲0.96%と1%近く押し下げるインパクトがあるとされています。
背景:日本の高いエネルギー依存度
日本は原油輸入の94.0%を中東地域に依存しており(2025年貿易統計)、それに用いられるタンカーの8割がホルムズ海峡を通るとされます。
エネルギーへの波及は石油にとどまりません。原油価格の高騰は、ガソリンや軽油、灯油等の石油製品価格に加えて、原油価格に連動するLNGの輸入価格も上昇させ、ガス・電気代にも波及します。さらに、エネルギーコストの増大は、様々な財・サービスの価格上昇にもつながり、わが国全体のインフレ圧力となります。
物価への段階的かつ広範な影響
| 第1段階(直後〜1ヶ月): ガソリンや軽油などの石油製品価格が迅速に上昇します。 |
| 第2段階(3〜9ヶ月後): 原油価格に連動するLNG(液化天然ガス)の輸入価格上昇により、電気・ガス代が値上がりします。ベースシナリオ(1バレル87ドル想定)では、電気代は年間で約9,518円の負担増になると試算されています。 |
| 第3段階(半年以降): 物流コストの上昇や原材料(プラスチック、化学繊維など)の値上がりを通じて、食料品や日用品など広範囲な財・サービスの価格に波及します。 |
論点と争点
今後の焦点は「実質賃金の行方」と「政府対応の限界」に集まっています。
実質賃金の再下落リスク: 目下では食料インフレの落ち着きの中で、長らくマイナス圏の続いてきた実質賃金のプラス転換が見通せる状況になっていました。仮にイラン情勢悪化を通じた原油価格への影響が深刻化する場合には、実質賃金のマイナス幅が再拡大する展開も生じうるとされています。
財政対応の限界: 補助金の財源である基金残高は約2,800億円(2月末時点)であり、事態が長期化すれば補助金額が増大し、財政支出が膨らむリスクが指摘されています。
スタグフレーションのリスク: NRIの木内登英氏は、イランが正式にホルムズ海峡の完全封鎖に踏み切り長期間続いた場合、日本は「景気悪化と物価高騰が共存するスタグフレーションの様相を強め、景気後退に陥る」と予想しています。
長期的な対策: わが国政府・企業は中東からの原油・LNG輸入制約の長期化も想定して代替調達などへの対応が急務とされています。長期的な観点では、国内の石油備蓄等の強化のほか、GX(グリーントランスフォーメーション)の推進によって化石燃料依存を低減させて供給ショックへの耐性を高めることも重要とされています。
原油価格の上昇は、時間差を伴って段階的に物価を押し上げます。
用語解説
WTI原油先物 米国産原油の代表的な価格指標。世界の原油市場の動向を測る基準として広く使われています。
ホルムズ海峡 ペルシャ湾とインド洋をつなぐ海域。世界の原油の約2割がここを通過するとされ 、ここが通行できなくなると世界規模のエネルギー供給不足につながります。
LNG(液化天然ガス) 火力発電などで使われる天然ガスを液化したもの。原油価格に連動する形で輸入価格が変動するため、原油高は数か月遅れで電気・ガス代にも波及します。
実質賃金 名目上の給与から物価の上昇分を差し引いた、実際の購買力のこと。物価だけが上昇すると、給与額が変わらなくても実質賃金は下がります。
スタグフレーション 景気が停滞しているにもかかわらず物価が上昇し続ける状態のこと。景気対策と物価抑制が同時に求められるため、政策対応が難しくなります。
出典元:野村総合研究所/第一生命経済研究所/Bloomberg/共同通信/ダイヤモンドオンライン/nippon.com/JBpress/貿易ドットコム
筆者のコメント

どうも、電気に依存しまくってる筆者です。
「中東で戦争が起きてるらしい」と聞いても、正直ピンとこない方も多いと思います。でも実は、その影響はすでに私たちの財布に直結し始めています。
まずガソリンが上がり、次に電気代・ガス代、そして数ヶ月後にはスーパーの食品や日用品にも…という「じわじわ値上がり」が今後続く見込みです。
特に気になるのは、「給料が上がっても、物価がそれ以上に上がったら意味がない」という点。せっかく賃上げの流れが出てきたのに、また家計が苦しくなる可能性があるというのは、見逃せないですよね。
ニュースは難しく聞こえますが、要は「海外の出来事が、数ヶ月後の自分の生活費に関係してくる」ということ。そのつながりを知っておくだけで、家計の備えも変わってくると思います。


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