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日本のレアアース問題、「脱・中国依存」って言い続けて15年、進捗どうですか

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「脱・中国依存」はどこまで進んだ? レアアース問題をわかりやすく解説

2026年3月 | 解説記事

そもそも「レアアース」って何?

レアアース(希土類)とは、スマートフォン・電気自動車(EV)・風力発電・MRI・半導体製造装置など、現代の産業に欠かせない17種類の金属元素の総称です。

「レア(希少)」とはいえ、地球上に全くないわけではありません。問題は採掘・精製できる国が極端に偏っていること。特に中国は、世界のレアアース精製の約92%を担っており、「中国なしでは動かない」産業が世界中に存在します。


今、何が起きているのか

中国による輸出管理の強化

2025年以降、中国は日本を含む各国へのレアアース輸出規制を段階的に強化しています。

  • 2025年4月:EVモーターに使われるジスプロシウム・テルビウムなど7種類のレアアースの輸出管理を強化(米国の関税措置への対抗が背景)
  • 2025年10月:さらなる規制強化を発表。ただし米中首脳会談を受け、2026年11月まで暫定停止
  • 2026年1月:軍民両用品目(デュアルユース品)に関する日本向け輸出管理の厳格化を発表。高市首相の台湾有事関連発言への牽制とみられる

日本への経済的影響

規制が続いた場合の損失額は以下のように試算されています。

期間損失額GDP への影響
3か月約6,600億円▲0.11%
1年間約2.6兆円▲0.43%

特に影響が大きい分野は、自動車・EV、電子部品、風力発電、医療機器(MRI)、航空宇宙の5つです。


「脱・中国依存」は進んでいるのか?

数字で見る現状

日本は2010年の尖閣諸島問題をきっかけにレアアースの調達先多様化を本格化しました。その結果、中国への依存度は当時の約90%から現在は約60%に低下しています。

ただし、これには大きな落とし穴があります。

採掘する国が変わっても、精製・加工の段階では依然として中国を経由せざるを得ないサプライチェーンが世界的に残っています。特に重希土類(ジスプロシウム・テルビウムなど)の中国依存はほぼ100%のまま。「産地は分散したが、加工は中国」という構造が変わっていないのです。

日本の4つの対策

日本政府・産業界はこれまで以下の対策を進めてきました。

  1. 調達先の多様化:カナダ・オーストラリア・アフリカ諸国との関係強化
  2. 代替技術の開発:レアアースを使わないモーターや素材の研究
  3. 国家備蓄の強化:有事に備えた備蓄量の積み増し
  4. リサイクルの促進:廃棄された電子機器からの回収(都市鉱山)

注目の「切り札」:南鳥島の海底資源

日本の最東端に位置する南鳥島の近海(水深約5,700m)に、重希土類を大量に含む海底泥(レアアース泥)が眠っていることがわかっています。その埋蔵量はジスプロシウムが日本の需要の400年分に相当するとも言われます。

2026年1月には探査船「ちきゅう」が試掘システムの接続試験を実施し、2月に成功を発表しました。ただし商業ベースでの採掘開始は、早くても2028〜2030年以降の見込みです。


3つの争点

争点①:規制の「本気度」はどの程度か

今回の措置は、経済制裁というより外交的な圧力の側面が強いとみられています。規制対象の定義が曖昧なため、企業側は「どこまでが対象か」判断に苦慮しており、実態としては不透明感が広がっている状況です。

争点②:「脱中国」は本当に実現できるのか

依存度60%への低下は成果ですが、加工・精製段階の構造問題は未解決です。代替サプライチェーンの構築には時間とコストがかかり、企業の現場では「すぐには動けない」のが実情です。

争点③:中国はレアアースを「武器」として使い続けるのか

中国は世界で唯一、輸出量を戦略的に制限できる立場にあります。2026年11月には暫定停止中の追加規制が再発動されるかどうかが、今後の最大の焦点です。


まとめ

ポイント内容
中国への依存度約60%(精製段階はほぼ独占)
重希土類の依存ほぼ100%
規制1年の損失試算約2.6兆円
南鳥島の商業化2028〜2030年以降

「脱・中国依存」は確実に進んでいますが、完全な自立にはまだ相当の時間がかかります。レアアースをめぐる問題は、単なる「資源の話」ではなく、日中関係・安全保障・産業政策が複雑に絡み合った現代の地政学リスクの縮図と言えます。


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