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【解説】北朝鮮が弾道ミサイル十数発を同時発射。KN-25・飽和攻撃・3つの背景を徹底解説

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北朝鮮、「十数発」同時発射の衝撃――防衛網を揺さぶる「飽和攻撃」の実態

発生した事実

防衛省は14日、北朝鮮が複数発の弾道ミサイルを発射したと発表した。日本のEEZ(排他的経済水域=沿岸から約370kmの範囲)の外に落下したとみられ、航空機や船舶への被害は確認されていない。

韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮は弾道ミサイルおよそ10発を首都平壌近郊の順安付近から日本海上に向けて発射。最高高度は約80km、飛距離は約340kmだった。今年に入って1月4日、27日に続く3回目の発射となる。

小泉防衛相は「米国・韓国等と緊密に連携しつつ、情報収集・分析に全力を挙げること、不測の事態への備えとして警戒監視に万全を期すこと」と指示を出したと述べた。高市首相も国民への迅速かつ的確な情報提供を指示した。


「KN-25」とは何か――ロケット砲と弾道ミサイルの「中間兵器」

今回使用されたとみられる兵器が、「KN-25(正式名称:600mm超大型放射砲)」だ。北朝鮮は「放射砲(多連装ロケット砲)」と主張するが、一般的なロケット砲より大型かつ長射程であることから、在韓米軍や日本の防衛省などはこれを短距離弾道ミサイル(SRBM)に分類している。 (出典:日本経済新聞)

直径600mm、全長8.2m、重量3000kg、射程は380kmと推定される。この口径は世界最大級で、ロシア・中国・米国の同種システムを凌ぐ規模だ。

さらに見逃せないのが核搭載能力だ。金正恩総書記は式典での演説でKN-25について「高い地形克服能力と機動性、奇襲的な連発精密攻撃能力を備え、韓国全域を射程とし、戦術核搭載まで可能」と評価した。これが単なる示威にとどまらない理由の一つだ。


「飽和攻撃」とは――なぜ「十数発同時」が脅威なのか

今回の発射で専門家が特に注目するのが、「飽和攻撃」(ほうわこうげき)という戦術だ。これは迎撃ミサイルの数を超えるほどの弾数を一度に発射することで、相手の防衛網を物量で突破しようとする戦法を指す。

6連装発射機(TEL)30基と従来確認されていた4連装9基を合わせると、最大216発のKN-25を一斉発射できると考えられており、韓国のミサイル防衛システムに飽和攻撃をかけて突破するのに十分な発射数だと指摘されている。

KN-25の探知自体は機動式弾道ミサイルに比べれば容易とされるが、同時発射数の多さでミサイル防衛システムに対抗する性格の兵器だ。iまた、通常弾頭を搭載したミサイルと核弾頭を搭載したミサイルを同一の発射機に混載することで、敵に極度の警戒を強いることも可能だと指摘されている。日米韓の現在の迎撃能力がこの脅威に十分対応できるかどうか、あらためて問われる局面となっている。


なぜ今、このタイミングで? ――3つの背景

① 米韓合同軍事演習への反発

今回の発射の直接的な背景として広く指摘されるのが、3月9日から19日まで実施中の米韓合同軍事演習「フリーダムシールド(自由の盾)」への対抗措置だ。北朝鮮は毎年この演習を「北侵演習」として強く非難しており、金与正・朝鮮労働党副部長は演習開始翌日の10日に批判談話を発表したばかりだった。また北朝鮮はミサイル発射を単なる軍事的テストとしてだけでなく、外交カレンダーの節目を意識した政治的メッセージとして活用するパターンが近年顕著になっている。

② トランプ政権の対話打診への「回答」

発射の前日、トランプ大統領は韓国の金民錫首相とホワイトハウスで会談し、金正恩総書記との関係に前向きな発言をしていた。わずか1日足らずで武力示威という形で応じたことは、対話には応じるが核保有国としての立場を認めさせた上での交渉を求めるという、北朝鮮の一貫したスタンスの表れと見られている。

③ 軍拡の「実証」――KN-25の部隊配備が加速

北朝鮮は朝鮮労働党の党大会を前に、KN-25(600mm超大型放射砲)50基を正式に人民軍部隊へ引き渡したことを公表している。今回の発射は、その実戦配備能力を内外に誇示する意味合いも強いと分析される。


今後の焦点

残る米韓演習の期間(〜19日)中に追加発射が行われるかどうかが当面の注目点だ。また、政府内では飽和攻撃などに必要な連続発射能力の向上への懸念が示されており、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有も含めた防衛力の抜本的強化に向けた議論が加速するとみられる。

国連安全保障理事会では中国・ロシアが北朝鮮擁護の姿勢を崩しておらず、追加制裁や非難声明の採択は引き続き困難な状況だ。北朝鮮が核保有国としての既成事実を着々と積み上げる中、日米韓が抑止と対話の両立をどう設計するかが問われている。


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